こだまちゃんは、今日も元気に森の工房でパンを作っていました。 ちいさな工房にたち込めるパンの甘い香りが、こだまちゃんの自慢です。 「すごいね!こだまちゃんって。ほんの少しのキビ砂糖と天然のお塩だけで、こんなにふわふわでおいしいパンを作るなんて・・・・。」 森の友達が、こだまちゃんのパンを食べながら嬉しそうに言いました。 こだまちゃんはちょっと照れて、ふと窓の外を見ると小さな男の子がちょっと寂しそうにこだまちゃんの工房を見ています。 こだまちゃんは気になって、焼きたてのパンをひとつ手に持ってその子のところに歩いていきました。
「どうしたの?よかったら、焼きたてのおいしいパンを食べない?」 そっと差し出したパンを見ると、その男の子は寂しそうに言いました。 「ぼくは、小麦が食べられないんだ・・・」 こだまちゃんは驚いてそのさしだした手を引っ込めました。 「とっても甘い香りなんだね・・・パンって。 きっと噛むとふわふわなんだろうなぁ」 男の子は青い空を見上げます。 そして、その瞳がちょっぴり濡れているように見えました。 「お米のパンがあったらいいのに・・・」 そう言うと、走ってどこかに行ってしまいました。 「お米でパンが作れたらいいのに・・・・お米で・・・」 その晩こだまちゃんは考えました。 「そうだ、明日森のサラおばさんに相談しよう」
翌日、こだまちゃんは森のサラおばさんを訪ねました。 するとサラおばさんは少し考えてからこう言いました。 「米太郎の話をよぉ〜く聞いて上げなさい。そうすれば、きっと米太郎も協力をしてくれるに違いない。でも、間違っても小麦ちゃんと比べてはいけません。そして、米太郎君が一緒に頑張るといったら、二人でまたここに来るといいわ。」
こだまちゃんは早速、米太郎くんの元に行きました。 「ねぇ・・・米太郎くん。一緒にパンを作りませんか?」 すると米太郎君は目を白黒させ、 「何だって?パンを作る?この、僕が?」 そうしていきなり大きな声で笑い出しました。 でも、こだまちゃんは一生懸命米太郎君を説得しました。 パンを食べられない子供たちにも、おいしいお米のパンを食べてもらいたいことを、一生懸命に話しました。 すると米太郎君が 「よし、わかった。僕にできるかどうかわからないけれど、一緒に頑張ろう」 と、言ってくれました。
それから、こだまちゃんと米太郎君はサラおばさんと相談しながら何日も何日も話し合いました。 まずは仲間集めからです。 サラおばさんの提案で、日本のキビ砂糖さん、ミネラルをたくさん持っている天然のお塩くんを呼びました。 そして、とうとう小麦ちゃんのいっさい入らない「お米パン」ができました。 こだまちゃんはすぐに、パンが食べられなかった男の子の元へ行きました。 でも、こだまちゃんはちょっと疲れていたので途中で一休みをしていたら、ついうとうと眠ってしまいました。
チチチッ・・チチチッ
こだまちゃんは鳥の鳴き声で目が覚めると、朝になっていました。
慌ててこだまちゃんは走り、男の子の元へ走りお米パンを届けに行きました。
すると男の子は言いました
「やわらかいパンが食べたいな・・・」
こだまちゃんは驚きました。
昨日焼きあがったときはふわふわでとてもやわらかかったのに・・・・・
こだまちゃんは、すこしがっかりしながらまたサラおばさんの下に行きました。 サラおばさんは考えました。 「もっとみんなの力を借りましょう。まずは、じゃがいもどんにお願いしてみましょう。」 すると、どうでしょう・・・・ふわふわのお米パンは次の日になってもふわふわのままでした。
うわ〜い!やったね!! 仲間たちと嬉しそうに飛び跳ねて喜ぶこだまちゃんに、サラおばさんはそっと言いました。 「みんなが手と手をしっかりつなぎあったからこそ、できたパンですよ。特に、こだまちゃんは、ゆっくりだけれど一生懸命ずっと働き続けて、おいしさやガスを作り続けたからこそ米太郎くんも頑張れたのね」 パンが食べられなかった男の子も、小麦ちゃんのパンがおいしいと思っていた森の仲間たちも 「お米のパンっておいしいねぇ〜」 と、大喜びです。 こだまちゃんは、そんなみんなの姿を見て嬉しそうに頭の上の葉っぱを、ツルンとなでました。